生活習慣を変えることで血圧が充分に下がらない患者さんには血圧を下げる薬剤である降圧薬を処方します。降圧薬は数多くありますが、最初に使用する薬剤はガイドラインが第一選択薬として推奨している以下の4種類の薬剤のなかから選択することが多いです(文献1, 2)。
- カルシウム拮抗薬
- アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
- アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
- サイアザイド系利尿薬
それぞれの薬剤について特徴と注意事項を解説します。
カルシウム拮抗薬
血管を広げることで血圧を下げる作用があり、比較的副作用が少ないため高齢者にも安全に使用できる薬剤です。薬剤の名前の最後は「・・ジピン」です。
アムロジピン:最もよく使用されている降圧薬です。効き目が1日以上続くことが最大の特長で1日1回の服用でよく、分割投与は不要です。服用する時刻はいつでも良いので患者さんが飲み忘れにくいときに服用していただきます。
ニフェジピンCR:最初に登場した歴史のあるカルシウム拮抗薬です。初期の製剤は血圧が急に下がりすぎることが問題でしたが、ゆっくりと効くタイプの徐放薬であるニフェジピンCR錠が開発されて安全に使用できるようになりました。
カルシウム拮抗薬の副作用のなかに足のむくみがあります。これは女性に多い副作用でカルシウム拮抗薬のを開始後や量を増やした後に足の甲がむくんできた場合には薬剤の影響を疑います。危険な副作用ではありませんが、むくみが気になるようでしたらカルシウム拮抗薬を減量・中止して別の薬剤に変更すると速やかに改善します。カルシウム拮抗薬を服用されている患者さんで足のむくみを感じた方はご相談ください。
上記のカルシウム拮抗薬はジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬と呼ばれる薬剤で高血圧治療の主力となるものです。カルシウム拮抗薬には別にジルチアゼムという非ジヒドロピリジン系の薬剤があります。
ジルチアゼム徐放カプセル(ヘルベッサーRカプセル):ジヒドロピリジン系(・・ジピン)の薬剤は2種類を併用することはできませんが、非ジヒドロピリジン系のジルチアゼムであれば併用が可能です。血管を拡張させる作用は弱く血圧を下げる力はやや弱いですがむくみの副作用は少ないです。心拍数を遅くする作用があるので注意が必要です。
アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
カルシウム拮抗薬に次いで使用されている降圧薬です。心臓・腎臓・脳血管疾患・糖尿病性腎症では臓器を保護する効果があるので選択されることが多いです。特に蛋白尿のある患者さんにはARBもしくはACE阻害薬を積極的に使用すべきです。カンデサルタン、テルミサルタン、ロサルタンなどのように薬剤名の最後に「・・サルタン」がつきます。
副作用の少ない薬剤ですが高齢者や腎臓病の患者さんでは投与開始後に腎機能が悪化したりカリウムが高値となることがあるので、最初は少量から開始し投与開始してから2週間から1ヶ月後に採血を行ってeGFRやカリウムを測定します。
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
上記のARBよりも古くからある薬剤で心臓病や腎臓病の悪化を防ぐことから広く使用されてきました。世界的には上記のARBよりも使用頻度が高い薬剤で海外のガイドラインではACE阻害薬が使用しにくい場合にARBを選択すべきと記載されているものもあります。エナラプリル、トランドラプリルなどのように薬剤名の最後に「・・プリル」がつきます。
服用した患者さんの1割程度に空咳(痰の出ない咳)の副作用があり、日本人を含む東アジア人では空咳が出やすいと報告されており、開始直後だけではなく服用して数年経ってから空咳が出てくることがあります。ARBの登場後はACE阻害薬が処方されるされることが日本では少なくなりましたが多くの患者さんでは問題なく使用できます。逆に咳が出やすいと気管の異物を排泄する能力が高まるので、高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐ目的でACE阻害薬が選択されることもあります(文献3)。
サイアザイド系利尿薬
体内の塩分(ナトリウム)を尿に出す作用のある薬剤です。利尿薬という名前はありますが少量から開始した場合には尿が増えたという実感がない方が多いです。日本人は塩分摂取量が多い上に、塩分を摂りすぎると血圧が上昇しやすい患者さんが多いことが知られており、高血圧の患者さんには減塩食を強くお勧めしています。しかし長年慣れた味覚を変えることは容易ではありませんので、減塩が難しい場合にはサイアザイド系利尿薬を開始します。サイアザイド系利尿薬は安い費用で心臓病を減らす効果があり、米国のガイドラインは心不全を予防する効果がアムロジピンやACE阻害薬より優れると高く評価しています。私は個人的にはサイアザイド系利尿薬はもっと使用されるべき薬剤と考えています。
サイアザイド系利尿薬の副作用に低ナトリウム血症と低カリウム血症があり、特に高齢の小柄な女性ではナトリウム値の低下に注意が必要です。
上記の4つの第一選択薬を最大3種類併用(一般的にARBとACE阻害薬の併用はしません)しても血圧が低下しない場合には下記の薬剤を追加することを検討します。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
血圧を上昇させたり、心臓の機能を弱めてしまうミネラルコルチコイドというホルモンの作用を弱める薬剤です。心不全の悪化を防ぐ作用が報告されてから使用されることが増えてきました。血圧を下げる作用も高いため複数の第一選択薬を併用しても血圧が高い場合にはMRAを追加することがあります。腎臓病の患者さんではカリウムが上昇しすぎて不整脈を起こす危険性があるため定期的な採血で高カリウム血症を否定する必要があります。ARBやACE阻害薬とMRAを併用する場合には、高カリウム血症の危険性がさらに高くなることに注意しなければいけません。心臓病の医学雑誌(文献4)では心不全の患者さんではカリウムを下げる薬剤(カリウム吸着薬)を併用してでもMRAを減量しないことを提唱していますが、このような管理をする場合には採血の回数を増やしてカリウムの数値をこまめに確認することが必要になります。
スピロノラクトン(アルダクトンA®):最も古くから使用されているMRAです。女性ホルモンに近い作用をもっており男性の乳房が大きくなる「女性化乳房」の副作用があります。
エプレレノン(セララ®):スピロノラクトンで問題となる女性化乳房の副作用がないのが特長です。
エサキセレノン(ミネブロ®):新しいMRAで、これまでの薬剤よりも効果が長く持続することが特長です。
β遮断薬
心拍数や心臓の収縮力を減らし、腎臓で産生される血圧を上昇させるホルモン(レニン)を減少させることで血圧を下げます。血圧を下げる作用は限定的なのですが心臓病の治療薬として広く使用されています。同じく心拍数を減らす作用のあるカルシウム拮抗薬のジルチアゼムとの併用には注意が必要です。ビソプロロール、カルベジロールのように薬剤名の最後に「・・ロール」がつきます。
α遮断薬
交感神経の作用を弱めて血圧を下げる薬剤です。単独で使用することはなく第一選択薬の開始後に併用薬として選択されます。血圧を下げる力は弱いですが、夜にα遮断薬を内服することで早朝の高血圧が改善することがあります。初回の投与直後に立ちくらみ(起立性低血圧)が発生しやすいので最初は少量から開始して徐々に増量するようにします。排尿障害の改善効果があるため前立腺肥大のある高血圧患者さんに使用しやすい薬剤です。
ドキサゾシン(カルデナリン®):1日1回の内服で効果が持続するため最も使用されるα遮断薬です。
ウラピジル(エブランチルカプセル®):高血圧以外に、前立腺肥大や神経因性膀胱による排尿障害に適応がある薬剤です。
中枢性交感神経抑制薬
上記の降圧薬を併用しても血圧が充分に下がらない場合に追加する強力な降圧薬です。立ちくらみ・眠気・だるさといった副作用があり高齢者に使用する場合には注意が必要です。投与を急に中止すると血圧が急上昇したり脈が早くなる副作用もありますので、きちんと服薬していただくことが投与開始の条件になります。私は中枢性交感神経抑制薬はどうしても血圧が下がらない場合の最終手段と考えています。
グアナベンズ(ワイテンス®):難治性の高血圧に対して1日2回使用します。またドキサゾシンを使用しても改善がない早朝高血圧に対して就寝前に使用すると有効です。
参考文献
- (1) 高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)作成委員会
- (2) UpToDate. “Choice of drug therapy in primary (essential)hypertension”. last updated Jan 30, 2024
- (3) Aspiration pneumonia. N Engl J Med. 2019 Feb 14;380(7):651-663.PMID: 30763196
- (4) Abnormalities of Potassium in Heart Failure: JACC State-of-the-Art Review. J Am Coll Cardiol. 2020 Jun 9;75(22):2836-2850. PMID: 32498812