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糖尿病の合併症

糖尿病を治療する目的は血糖値やHbA1cを改善させることではなく、健康に悪影響を与える合併症を予防することです。糖尿病の治療が不完全であった場合には様々な臓器に重大な問題を起こしてしまいます。糖尿病の合併症には一旦発生してしまうと完全には治癒しない病気も多くあります。合併症を防いで元気に日常生活を送るために、糖尿病に関連して起こりうる健康上の問題について解説します。

糖尿病性網膜症

糖尿病の合併症で第一にあげるには視力の障害です。高血糖が持続すると目の奥にある光を感じ取る網膜に変化が起きる糖尿病性網膜症を来します。糖尿病性網膜症で重要なのは病気の初期だけではなく、ある程度進行してからも自分で分かる症状が現れないことです。糖尿病の診断を初めてされた患者さん全てに早めの眼科受診をお願いしているのは、症状がなくても目の合併症が始まっていることはしばしばあるからです。日本人の失明の原因の第3位が糖尿病です。視力を失うと日常生活に大きな支障を来たすため、糖尿病患者さんは毎年最低1回は必ず眼科を受診していください。眼科受診では目の奥を詳しく診るために一時的に瞳を開いた状態にする散瞳を行います。散瞳をすると数時間は前が見えにくくなるので、自分で車を運転して眼科を受診することができません。ご面倒ではありますが皆さまの大切な視力を守るための定期チェックは先送りにしないようお願いします。

糖尿病性網膜症発症や進行を防ぐにはHbA1cを7%未満に維持することが必要です。また網膜症の予防のために高血圧や脂質異常症を積極的に治療することも有益です。

糖尿病性神経障害

糖尿病患者さんの合併症として注意すべきものに神経障害があります。糖尿病性神経障害を発症した患者さんの約半数は症状を自覚されていないと言われています。手足の神経障害に早めに気づくことによって、怪我をしないように気をつけて足壊疽を予防することができます。自律神経障害の存在を知ることで、失神や転倒を来さないようにゆっくりと立ち上がる習慣を身につけることができます。神経障害を早期に診断することは適切な対応を始める上で大変重要です。神経障害を発症する原因は糖尿病以外にもあります。

末梢神経障害

糖尿病のコントロールが不十分であると手足の先の神経が障害されます。典型的には最初に足先や足の裏のしびれやチクチク、ビリビリした不快な感覚が生じます。痛みが持続する場合には神経痛を緩和するための薬を使用することがあります。末梢神経障害が進行すると足先の感覚が鈍くなり、怪我や火傷に気づくのが遅れます。末梢神経障害の存在を早めに気づくことで深刻な合併症である足壊疽を防ぐための心がまえができます。

自律神経障害

心臓・血管:初期段階では無症状で、検査で心拍数に変動が少なくなる異常のみ見られます。進行すると立ち上がった時に血圧が低下する(起立性低血圧)ようになり、立ちくらみ・めまい・失神の原因になります。安静時に脈拍が不必要に早くなったり、体を動かした際に脈が適切に増加しないといった脈拍数の異常があるときも糖尿病性神経障害の関与を疑います。体を起こすときにはゆっくり動くこと、移動時には手すりを活用することなどで血圧変動を最小限にして転倒しないように気をつけていただきます。また糖尿病性神経障害によって狭心症や心筋梗塞のときの胸痛が自覚されにくくなるという問題があります。このため糖尿病の患者さんは体調不良時には積極的に心電図を行って以前の結果と比較する必要があります。

消化管:神経障害のために胃腸の動きが悪くなると吐き気、便秘、下痢といった症状が起きやすくなります。胃潰瘍などの消化器疾患がないことは必ず確認します。糖尿病性神経障害では食物が胃に入った後になかなか腸まで流れていかずに胃内に留まってしまうことがあり、食べた直後に横にならないように気をつけていただきます。胃腸の働きを妨げる薬剤には三環系抗うつ薬・下痢止めの一部・GLP-1受容体作動薬などがあり、糖尿病性神経障害で胃腸症状の方でこれらを使用している場合には薬剤の必要性と副作用を考慮して継続の是非を判断します。

膀胱:尿回数の増加、尿の勢いの低下、尿漏れの原因として糖尿病性神経障害による膀胱機能の低下がありえます。排尿直後でも膀胱内に多くの尿が残る場合には泌尿器科へご紹介することがあります。

神経障害の管理:一旦発症した糖尿病性神経障害を治癒させる治療法は残念ながらありません。しかし糖尿病をきちんと治療することで神経障害を進行を抑えることは期待できます。また高血圧をしっかり治療することで糖尿病性神経症の危険性を減少させたという報告があります。多くの合併症と同様に全身を健康に保つ努力は神経を守ることにつながります。

糖尿病性腎症 別項で詳細に解説

足病変

糖尿病の重大な合併症に足壊疽があります。足壊疽は、血糖コントロールの不良、糖尿病性神経障害による足先の感覚が鈍くなること、足の血行障害、喫煙、足の変形などの複数の要素が危険因子として知られています。既に糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症の診断をされている患者さんは特に足の病変の出現には注意する必要があります。

糖尿病患者さんの外来では足病変の危険な兆候として①長時間歩行できるか、②足の痛みや冷え、③過去の皮膚潰瘍、の有無をお聞きします。また年に1回は診察時に足の動脈の拍動の有無や感覚の異常を確認します。糖尿病性神経障害や血行障害(下肢閉塞性動脈硬化症)の場合には足壊疽の危険性が高いので要注意です。足の血行障害が疑われる患者さんは血管外科へご紹介して治療できるかどうか検査を受けていただきます。水虫(足白癬)は皮膚潰瘍や感染症の原因となるため未治療の場合には治療を開始します。糖尿病の患者さんは定期的に外来で靴下を脱いでいただきますのでご協力をお願いいたします。

心血管病

糖尿病の治療において重要な目的の一つが心臓病・脳卒中といった心血管病を防ぐことです。糖尿病は心血管病を引き起こす大きな要因となります。糖尿病と診断された患者さんは未来に発症しうる心血管病を防ぐために高血圧・高コレステロール(脂質異常症)をよりしっかりと治療することをお勧めします。また心血管病の診断をされている患者さんではSGLT2阻害薬・GLP-1作動薬といった薬剤が心臓病の進行を抑制する作用があります。前述のように糖尿病患者さんは無症状のうちに狭心症や心筋梗塞を発症していることがあるため、年に1回は心電図・胸部レントゲンを受けていただくことをお勧めします。

歯周病

糖尿病患者さんでは歯周病を発症する危険性が高くなることが報告されています。歯周病による慢性的な炎症は糖尿病を悪化させることも分かっており、糖尿病の治療の一環として歯科治療も並行して行うべきです。さらに歯周病を治療することで心血管病の危険性も低下させる可能性も報告されています。歯科治療は全身の病気を防ぐためにも重要なのです。糖尿病患者さんは眼科同様に定期的に歯科受診をしていただくことをお勧めします。

参考文献

  • 糖尿病性合併症について 日本糖尿病学会 患者さん向け解説
  • 糖尿病診療ガイドライン2024. 日本糖尿病学会
  • プライマリ・ケア医のための新・糖尿病診療. 日経メディカル 岩岡秀明 著
  • Diabetes Care 2024;47(Supplement_1):S20–S42. PubMed: 38078589
  • UpToDate. “Management of diabetic neuropathy” last updated Feb 01, 2024.
  • UpToDate. “Diabetic autonomic neuropathy” last updated Jul 19, 2023.
  • UpToDate. “Evaluation of the diabetic foot” last updated Jan 04, 2024

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