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糖尿病性腎症

糖尿病性腎症

糖尿病の重大な合併症の一つが腎臓の機能が障害されることです。典型的には最初に尿タンパクが陽性になり、進行とともに蛋白尿が増加した後に腎臓の機能が徐々に悪化します。糖尿病患者さんの尿にタンパクが認められることは18世紀から記録されているそうです。腎臓の内部には細かい血管が球状に張り巡らされた糸球体という浄化装置があるのですが、血糖値が高い状態が何年も続くとこの糸球体の構造が変化して腎臓の機能が低下してしまいます。糖尿病で腎臓の組織に変化が現れることは古くから知られており、文豪である夏目漱石の腎臓にも糖尿病性腎症と思われる所見があったことが1927年に報告されています(文献1)。

現代においても日本で新規に透析が必要になる第一の原因は糖尿病であり、糖尿病治療の大きな目標の一つが腎臓を大事にすることです。健康を維持するために重要な糖尿病性腎症について解説いたします。

糖尿病性腎症の診断と分類

糖尿病性腎症の初期は自分でわかる症状はありません。糖尿病性腎症の早期診断に大変重要なのが尿のアルブミンという蛋白質です。健康診断で蛋白尿が陰性であってもアルブミン尿が出ていることはしばしばあります。蛋白尿の指摘がない(正常〜微量アルブミン尿の)糖尿病患者さんでは3ヶ月に1回だけ健康保険を使用して尿のアルブミンを測定することができます。尿のアルブミンが繰り返し陽性であった場合には糖尿病性腎症と診断して腎臓を保護する薬剤の使用をご提案します。尿アルブミンが多い患者さんは腎臓の機能の低下が早いことが分かっています。さらに尿アルブミンが陽性になると腎臓だけではなく心臓や血管の病気も発症しやすくなります。早期に適切な治療を開始することで腎臓や心臓の機能を有効に温存することが可能になるので、尿アルブミン測定によって糖尿病性腎症を早期に診断することは糖尿病患者さんの健康管理にとって大きな意味があります。残念ながら日本人の糖尿病患者さんのうち定期的に尿アルブミンを測定している方はたった20%しかおられません。私は腎臓専門医として糖尿病の患者さんには腎臓を守るために定期的な尿アルブミン検査を是非とも受けていただくようにお勧めします。

糖尿病性腎症は尿アルブミン量と推算糸球体濾過量(eGFR)の数値によって分類されています(文献2)。尿アルブミンが多いと腎臓の機能が低下する危険性が上昇することが分かっており、尿アルブミンの量によって糖尿病性腎症は軽症の1期から進行した3期までの分類がされています。

eGFRは採血でクレアチニンもしくはシスタチンCを測定することで計算される腎機能の点数で若い人の正常値はおおよそ100くらいです。eGFRの数値を見ると若者の腎臓と比べて何パーセントの腎機能があるのかが予想できます。eGFRが45未満の糖尿病性腎症の患者さんは腎機能が徐々に悪化する危険性があるため慎重に経過を見るべきです。eGFRが30未満の場合には腎機能が悪化する危険性が非常に高いため糖尿病性腎症4期に分類されます。糖尿病の患者さんはご自分に腎臓の健康度チェックとして尿アルブミンの量とeGFRの数値を以前の検査結果と比較してくださるようお願いします

体の奥の臓器たちの悲鳴はなかなか自分自身では聞き取れないですが、腎臓病の検査を受けることで静かに進行している内臓や血管の異変を早期に察知できます。糖尿病性腎症の検査を受けることは未来の病気を予防するきっかけとして前向きに考えて下さい。

糖尿病性腎症の治療

<血糖コントール>

糖尿病性腎症の発症を防ぐためには血糖コントロールを良好にすることが必要です。HbA1cの目標は7%以下が望ましいですが治療薬の選択として以下の薬剤が推奨されています。

SGLT2阻害薬:腎臓と心臓の機能を保持することで注目されている糖尿病薬です。血糖を下げるだけではなく蛋白尿がある慢性腎臓病の患者さんの腎機能を温存する効果が報告されたため、糖尿病以外の慢性腎臓病の患者さんにも使用されるようになりました。SGLT2阻害薬の注意点として投与開始して2週間から2ヶ月の時期に一時的に腎機能が見かけ上で低下(eGFR低下)したように見えることがあります。一旦低下した腎機能はその後に横ばいとなるので多くの患者さんでは心配なく内服を継続できますが、念のために新規に処方が開始された後は何度か採血して腎機能(eGFR)を確認することが安全です。

GLP-1受容体作動薬:腎機能が低下した患者さんでは1SGLT2阻害薬の血糖を下げる作用が弱くなります。この場合にGLP-1受容体作動薬の併用が有効です。GLP-1受容体作動薬には腎機能の悪化や心臓血管病の発症を抑える作用が報告されており糖尿病性腎症の治療に適しています。

<血圧コントロール>血圧を下げる薬」参照

糖尿病性腎症を悪化させないためには血圧130/80mmHg未満を目標に血圧をコントールすることが推奨されています。使用する降圧薬はARBもしくはACE阻害薬が第一に選択されます。いずれも蛋白尿を減らして糖尿病性腎症の悪化を遅らせる効果があります。ARBもしくはACE阻害薬を最大量まで増量しても血圧が目標まで低下しない場合にはカルシウム拮抗薬を併用します。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)も蛋白尿を減少させる効果がありますが、MRAにはカリウムが高値になる副作用がありARBやACE阻害薬との併用で高カリウムをさらに来しやすくなる点に注意が必要です。

フィネレノン(ケレンディア®):2型糖尿病を合併する慢性腎臓病にのみ使用が認められているミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であり高血圧だけの患者さんには使用することができません。糖尿病性腎症の悪化を遅らせる作用が報告されています。フィネレノン服用中は定期的に採血をしてカリウム値が正常であることを確認することが必要です。

<生活習慣の改善>

糖尿病性腎症の患者さんは糖尿病以外にも様々な合併症があることが多いです。糖尿病性腎症を悪化させる因子として高血圧、動脈硬化、肥満、喫煙、心臓病、腎臓に悪い薬剤などがあげられます。腎臓に悪影響をもたらすこれらの原因は心臓病や脳卒中の原因にもなりえます。腎臓の検査異常をきっかけに生活習慣を見直すことで腎臓の機能を長く維持しながら、全身を健康的にしていきましょう。

糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease: DKD)

糖尿病患者さんで腎臓の機能が低下した方の中にはアルブミン尿が増加していないケースがしばしばあります。このような患者さんを糖尿病性腎症と診断するべきかどうかについてはこれまでも議論がありました。糖尿病の患者さんは肥満・高血圧・心疾患などの合併症がある比率が高く、糖尿病以外の原因も合わさって腎臓の機能が低下していることが推測されます。このため糖尿病に関連した慢性腎臓病を新しく糖尿病性腎臓病(DKD)と呼ぶことになりました。DKDには糖尿病性腎症だけではなく糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)を含みます。ただしCKDの原因として糸球体腎炎や多発性嚢胞腎などの診断をされている場合には糖尿病を合併していてもDKDには含めません。(文献1)

新しい呼び方が加わっても腎障害を合併した糖尿病患者さんの治療が変わるわけではありません。腎機能に心配がある糖尿病患者さんは高血糖を治療することに加えて、高血圧や脂質異常症を特にしっかり管理することで腎臓・心臓・血管を温存することが重要です。

参考文献

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