高尿酸血症の治療は肥満・飲酒などの生活習慣の改善が大切ですが、患者さんのなかには薬物治療が必要な方もおられます。尿酸降下薬はずっと継続することが推奨されており患者さんにとっては大きな決断です。もりもりクリニックでは尿酸降下薬について様々な意見があることをお示しした上で患者さんと治療方針を相談します。
尿酸降下薬の適応
高尿酸血症の患者さんのなかで尿酸を下げる薬剤の開始をお勧めするのは以下の3つの場合でです。
1)痛風発作が1年で複数回ある
痛風発作(痛風性関節炎)は非常に強い痛みを伴うため生活に大きな支障となります。数年に1回くらいしか痛風発作がない患者さんでは急性期の治療のみを行って尿酸降下薬を使用しないことがありますが、1年に何回も痛風発作を繰り返す場合には尿酸降下薬を開始して痛風発作を予防することをお勧めしています。
2)痛風結節・痛風による関節破壊
尿酸の結晶が沈着して骨や皮膚の下、腎臓などの臓器に塊ができたものを痛風結節と呼びます。痛風結石が大きくなると皮膚を破って白い結晶が流出したり、臓器の機能を損なうことがあるので問題です。尿酸降下薬によって痛風結節を縮小させることができるので、痛風結石のある患者さんでは薬剤の使用が望ましいです。
3)尿路結石
尿酸結晶は尿路結石の原因となりますので、尿酸値の高い患者さんは超音波検査で腎結石の有無を確認することが望ましいです。高尿酸血症の患者さんのなかで腎臓に結石があったり、尿管結石を発症したことある場合には尿酸降下薬の使用をお勧めしています。
初めて痛風と診断された患者さんに尿酸を下げる薬剤である尿酸降下薬を開始することについては各国の痛風ガイドラインで意見が分かれます。
①痛風患者さん全員に投薬する派:日本のガイドラインでは以前から痛風を発症したら尿酸降下薬を開始することを推奨しています。これは欧米の方針とは異なる日本独自の考え方でしたが、最近のフランスのガイドラインでは他のガイドラインとは違う見解であると説明の上で、心血管や腎臓に悪影響を与える可能性から痛風診断後は出来るだけ早期に尿酸降下薬を開始すべきとあります。
②初回発作では原則として投薬しない派: 英米のガイドラインでは初回痛風発作後の投薬は推奨していません。英米のガイドラインでは年2回以上の痛風発作があれば尿酸降下薬を考慮すると記載されています。英米ガイドラインで尿酸降下薬を提案すべきとされるのは重症痛風関節炎、慢性痛風関節炎、画像での関節障害の所見、痛風結節の存在、尿酸値9mg/dL以上、慢性腎臓病(eGFR60未満)、利尿薬を使用している患者さんです。
私は初めて痛風発作を発症した患者さんには上記の様々な意見があることを説明します。そして痛風患者さんに併存しやすい心血管病・慢性腎臓病・腎結石症・生活習慣病の検査をお勧めしています。痛風発作を契機に未診断の病気に気づくことがあり、生活習慣を見直す良い機会にもなります。高尿酸以外に異常がない患者さんには痛風発作を繰り返さないために薬を飲むかどうかをお聞きしています。このお答えは様々ですが皆さんのお考えに沿った対応が初回発作時の正解だと自分は考えています。
以下は尿酸降下薬についての詳しい解説です。専門的な知識を含みますので少し難しいかもしれません。ご興味のある方はご一読ください。
尿酸降下薬の開始時期
これまで多くの教科書では痛風発作の痛みが引いてから2週間以上経過するまで尿酸値を下げないように明記しており、私も原則として関節の痛みが改善するまで尿酸降下薬は開始しません。しかし米国ガイドラインでは発作中の尿酸降下薬が実際には有害ではないとする報告を引用して、痛風発作が改善していなくても尿酸降下薬を開始することを支持しています。実際に完全に関節痛が消失するまでに数週間以上を要することや、痛風が何度も再発して数週間待てないことを経験します。このようなケースでは痛風関節炎の治療と並行して尿酸降下薬を開始することがあります。
治療開始時の再発予防
尿酸値は急激に低下するとかえって痛風発作が再発しやすいことが知られています。尿酸が急激に低下しないように尿酸降下薬は少量から開始して段階的に増量していきます。欧米のガイドラインでは尿酸降下薬を開始する前に痛風発作の予防としてコルヒチンなどの痛風関節炎の治療薬(https://morimori-clinic.com/?treatment=gout-flare)を併用することを推奨しています。予防投薬の期間が長期になるため日本のガイドラインでは副作用の心配からコルヒチンの使用には消極的です。私は尿酸降下薬を開始する患者さん全員にはコルヒチンやNSAIDは不要ではないかと考えていますが、痛風発作を短期間で反復したり痛みが激しい患者さんでは予防薬併用の適応と考えています。
尿酸降下薬を開始後は痛風発作が再発しやすいため、痛風性関節炎の治療薬(コルヒチン・NSAID)をあらかじめ準備しておきます。初回の痛風発作に似た症状を感じたら速やかに内服することで早期の改善が得られます。痛風発作が再発しても尿酸降下薬は中止せずに同じ量を継続するようお願いします。
尿酸降下薬の種類
アロプリノール:日本では1969年から使用されている薬剤で尿酸の生成を抑制する作用があります。優れた効果と薬価が安いことから米国ガイドラインでは痛風に対して第一に選択すべきと強く推奨されています。問題点として重大な過敏症のリスクがあるので服用開始後に発疹・口内炎・発熱などが出現した場合には早期に受診すべきです。腎機能が低下している患者さんでは副作用が生じやすいため腎機能に応じてアロプリノールの減量が必要です。
フェブキソスタット(®フェブリク):アロプリノールとは異なる様式で尿酸の生成を抑制する薬剤です。英国ガイドラインでは痛風患者さんにはアロプリノールとフェブキソスタットを第一選択薬に挙げています。腎機能低下している患者さんにはアロプリノールよりも安全に使用できるため慢性腎臓病の患者さんには選択されることが多い薬剤です。
トピロキソスタット(®ウリアデック・®トピロリック):フェブキソスタットと同様の効果をもつ薬剤です。フェブキソスタットは1日1回内服ですが、トピロキソスタットは1日2回服用する薬剤です。
ベンズブロマゾン(®ユリノーム):尿に尿酸を排泄する作用を持つ薬剤(尿酸排泄促進薬)で我が国でよく使われてきました。尿の尿酸濃度を上昇させるため尿路結石が発生しやすくなるため、尿路結石のある患者さんでは使用を避けます。米国ガイドラインでは尿酸排泄促進薬は腎機能が低下した患者さん(eGFR60未満)にも使うべきではないとしています。尿路結石が無い場合でもこの薬剤を使用する場合には尿路結石予防のために水分を充分に摂取して尿量を増加させて尿の尿酸濃度を下げることが推奨されます。また尿が酸性に傾くと尿路結石が発生しやすいため尿が酸性である場合には尿をアルカリ化させる薬剤の併用を検討します。ベンズブロマロンは重症の肝障害の報告がされているため投与開始してから6ヶ月間は採血で肝機能検査を行う必要があります。
ドチヌラド(®ユリス):日本人研究者によって発見された尿酸を再吸収する輸送体URAT1を阻害する薬剤で非常に強い尿酸排泄能があります。ベンズブロマロン同様に尿酸排泄促進薬であるため尿路結石のリスクを増やすため飲水量と尿の酸性度には注意が必要です。
参考文献
(1) 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 [2022年追補版]』(PDF)
(2) 2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout. FitzGerald JD, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2020. PMID: 32391934 Free PMC article. (米国の痛風ガイドライン)
(3) Overview | Gout: diagnosis and management | Guidance | NICE. Published: 9 June 2022.(英国の痛風ガイドライン)
(4) 2020 recommendations from the French Society of Rheumatology for the management of gout: Urate-lowering therapy. Pascart T, et al. Joint Bone Spine. 2020. PMID: 32422338 (フランスの痛風ガイドライン)
(5) UpToDate. “Kidey stones in adult: Uric acid nephrolithiasis” last updated Jan 19, 2024