むくみ(浮腫)のために医療機関を受診される方は多くおられます。浮腫とは皮膚の下の組織に水分が貯留して腫れてきた様子が分かるような状態をいいます。浮腫の原因は様々で重大な疾患のサインとして現れることもあるので注意が必要です。また複数の原因が合わさって浮腫みが発生することあるため単一の対策では回復しないことも多いです。
浮腫みが見た目で明らかになるには、少なくとも2.5kgから3kgは体重が増えるくらいの水分貯留がおきています。どんなに沢山たべても1週間で3kg増やすことは難しいですが、3Lの水分が短期間で貯まることは珍しくありません。浮腫みを感じたら体重を毎日測定して記録することをお勧めします。そして体重が短期間で増えているときには体重の記録を持参して早めに医療機関を受診しましょう。
むくみ(浮腫)の原因
- 体液過剰:血管の中の血液量が多すぎて血管外に水分が溢れ出る状態です。進行した心不全や腎臓病の患者さんでは血管の中の水分が過剰になりやすいため、最初の症状が浮腫みのことがあります。利尿薬という薬剤は尿を増やして体内の塩分と水分を取り除く薬ですが、利尿薬が有効なのは体液過剰の患者さんに限られます。これ以外の原因でむくんでいる患者さんに安易に利尿薬を使用すると効果がないだけでなく体のバランスを崩す原因になるので注意が必要です。
- 低アルブミン血症:血液中のタンパク質アルブミンが減って水分を保持できない状態です。血液の中にあるアルブミンというタンパク質は水分を血管の中に保持する機能があります。山林にある樹木の根っこは水分を保持することが知られています。山の木を切り倒してしまうと根っこが水を捕まえることができず豪雨の際に麓に濁流が流れてしまうように、血管内のアルブミンが不足するとアルブミンが保持していたはずの水分が血管の外に漏れてしまい足の浮腫みが出現します。低アルブミンを来す代表的な疾患はネフローゼ症候群や肝硬変ですが、食欲が低下したり慢性的な病気で栄養状態が悪い患者さんもアルブミン値は低下します。
- 血管透過性亢進:血管の壁から水分が漏れやすくなっている状態です。血管の壁には水分が漏れにくいような裏打ちがされています。しかし特殊な状況ではこの裏打ちが崩れて血管から水が溢れやすくなります。糖尿病患者さんは血管から水分が漏れやすい傾向があり、糖尿病性腎症によって血液のアルブミンが減ったり腎臓の機能が低下することも相まって足の浮腫みが発生しやすいです。また高度に栄養状態が悪い患者さんも血管から水分が溢れやすく、栄養不足のために低アルブミンも合併するため血管内は水分が不足しても足の浮腫みが見られることがあります。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが不足すると血管外にある種の蛋白成分と水分がたまること、血管から水分が漏れやすくなること、心臓や腎臓の機能が低下することなどが複合的に作用して浮腫みを来します。比較的まれな疾患ですが治療薬によって確実に回復するため浮腫みの原因が不明の場合には甲状腺の機能を調べるために血液検査を行います。
- リンパ浮腫:リンパ液の流れが悪くなることです。手足の水分は血管以外にもリンパ液としてリンパ管というパイブを通って体幹部に戻っていきます。手術や悪性腫瘍でリンパ液の流れが妨げられると手足に浮腫みがおきます。
- 月経前症候群(生理前のむくみ):女性の生理の周期によって浮腫が出現することがあります。頭痛・緊張・イライラといった症状が同時にある場合には生理の影響を疑います。女性ホルモンが関与しているとされますが明らかな原因は分かっていません。カフェイン・飲酒・タバコは症状を悪化させることから控えるべきです。内科での治療は漢方薬を試みますが、ホルモン補充療法の相談のために婦人科へ紹介することがあります。
薬剤によるむくみ
むくんでいる患者さんには薬手帳をお見せいただいて内服薬のなかに原因がないかどうか確認します。以下の薬剤はむくみを起こす可能性がある薬剤の一部です。薬剤が原因かどうかは一旦中止してみる必要がありますが、中止が困難な薬剤もありますので受診していただいた上でご相談ください。
- カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど):高血圧で最も使用されている降圧薬でしばしば浮腫みの原因となります。降圧薬としては有効性・安全性が高いのですが量を増やすと足の浮腫みが出現することがあります。他の降圧薬に切り替えることでカルシウム拮抗薬を減量してみることで薬剤による浮腫かどうかを判断します。
- ピオグリタゾン(®アクトス):糖尿病の治療薬で浮腫みを来すことがある薬剤です。特に心不全の患者さんでは使用を避けます。
- 消炎鎮痛薬(ロキソプロフェンなど):毎日服用していると血管内に水分を溜め込む作用があるため心不全などの疾患のある患者さんでは浮腫みの原因になりやすいです。
- 漢方薬:甘草という成分が含まれる場合には注意が必要です。甘草には水分と塩分を体内に保持する作用があり浮腫みの原因になります。足が痙攣するのを防ぐ効果がある芍薬甘草湯には甘草が多いため長期間使用する場合には1日1包までに留めることが望ましいです。
参考文献
- むくみの診かた 松尾 汎 編 文光堂
- 総合診療で診逃さない!むくみの原因とピットフォール 金城 光代・西垂水 和隆 (編集, 著