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CKDの治療

慢性腎臓病(CKD)は様々な要素が合わさって進行するため、治療は1つではありません。さまざまな治療法の組み合わせで腎臓を大切にして全身の健康を保つことが必要になります。

血圧管理

血圧を良い数値にすることは腎臓を大切にするうえで最も重要です。血圧を下げる目標は患者さんによって異なりますが、慌てずに少しずつ下げるようにしましょう。また薬だけではなく、塩分控えめや適度な運動、充分な睡眠などの生活習慣を見直すことで血圧に良い影響が期待できます。

CKD患者さんの家庭血圧の目標値

蛋白尿や糖尿病は腎臓の機能の低下や心臓・血管の病気を引き起こしやすいため、しっかりと血圧を下げることが推奨されています。家庭で測定した血圧の目標値は以下のとおりです。

  • 蛋白尿のあるCKD・・・125/75mmHg
  • 糖尿病のあるCKD・・・125/75mmHg
  • 蛋白尿のないCKD・・・135/85mmHg
  • 75才以上のCKD・・・・145/85mmHg まずはこれを目標として、問題がなければ135/85mmHgまで下げます

蛋白尿があるCKDの方には、蛋白尿を減らす作用のある降圧薬を選択します。具体的にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を使用します。蛋白尿のないCKDではカルシウム拮抗薬から開始することが多いです。1種類の薬だけでは十分に血圧が下がらないときには、複数の種類の薬剤を組み合わせて段階的に血圧を下げていきます。(血圧を下げる薬 参照

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は尿の中にブドウ糖を排出する作用がある薬剤で、糖尿病の治療に用いられます。当初は糖尿病の治療薬として使われていたSGLT2阻害薬ですが、糖尿病患者さんの慢性心不全やCKDの治療にも有効であることが分かってきました。さらに糖尿病ではない慢性心不全やCKDの患者さんであっても、SGLT2阻害薬には高い有効性があることが証明されました。

SGLT2は尿の中へブドウ糖を出すだけではなく以下のような様々な作用により心臓と腎臓を保護します。心臓と腎臓は相互に作用しあうため、両方の臓器に保護作用をもつSGLT2阻害薬は、その相互作用を好転させる薬剤と考えられます。

  • 塩分の体外への排泄を増やす
  • 血圧を下げる
  • 体重を減らす
  • 貧血を改善させる

SGLT2阻害薬には蛋白尿を減らす効果があるため、蛋白尿を合併しているCKD患者さんには積極的に選択することが望ましいです。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)は蛋白尿を減らして、腎臓の機能を温存する非常に優れた薬ですが、CKD患者さんではカリウム値が高くなることが共通する問題点です。SGLT2阻害薬はこれらの薬剤と併用することで、腎臓の保護効果を強めるだけではなく高カリウムになりにくくなる効果があることが報告されています。(JAMA 2025 文献 参照)

SGLT2阻害薬の注意点

SGLT2阻害薬を使用すると尿路感染症・性器真菌感染症のリスクが上昇します。投与開始後に陰部の痒みや違和感を感じた場合には投与を中止することがあります。全体としては入院を有するような重大な感染症を増やすことはないようです。

SGLT2阻害薬は糖分・水分・ナトリウムを体外に排出する作用があるため、高熱・嘔吐・下痢のような脱水を来す状況下では休薬が望ましいです。体調不良時はSGLT2阻害薬は中止した上で、医師に服用再開の時期を相談してください。

現在、以下の2種類のSGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)の治療薬として認可されています。使用については医師にご相談ください。

  • ダパグリフロジン(フォシーガ®)10mg・・・薬価=1,982.7円/30日(3割負担の場合)
  • エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス®)10mg・・・薬価=1,494円/30日(3割負担の場合)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)

ミネラルコルチコイドとは塩分を体内に貯留させたり、血管を収縮させて血圧を上昇させる作用があります。さらに腎臓と心臓の機能低下(線維化)の原因となったり、体内の炎症を促進させるなどの問題を引き起こします。このミネラルコルチコイドの作用を弱める薬剤はMR拮抗薬です。MR拮抗薬は高血圧の治療薬として登場しましたが、慢性心不全の治療薬として注目されるようになりました。さらに2型糖尿病を合併したCKD患者さんに対して、MR拮抗薬フィネレノンが有効であることが複数の研究で明らかにされてました。CKDの治療薬としてMR拮抗薬が大変注目されています。

MR拮抗薬は糖尿病性腎症の治療に有効

慢性腎臓病と慢性心不全では、臓器が線維化(硬くなること)して悪化することが共通の問題点です。この線維化を食い止める効果があるのがMR拮抗薬です。カリウムが高値でなければ蛋白尿を伴う2型糖尿病のCKD患者さんにはMR拮抗薬フィネレノンは使用すべき薬剤と言えます。

MR拮抗薬の問題点

MR拮抗薬はカリウムを体内に貯留させる作用があります。心不全の治療薬として脚光をあびてMR拮抗薬の使用頻度が急増した結果、高カリウム血症で入院する患者さんが増えました。高カリウムは危険な不整脈の原因となりうるため非常に大きな問題となりえます。またMR拮抗薬はCKDで問題となる血液のpHを酸性に傾かせる作用もありますので、この点も注意が必要です。

しかし腎臓専門医は定期的にカリウム値を確認することや、カリウムを低下させる作用のある利尿薬などと併用することでMR拮抗薬を安全に使用することに努めています。SGLT2阻害薬とMR拮抗薬の併用はCKDに非常に有効であるとの報告もありますので、CKDでのMR拮抗薬の使用は腎臓専門医の腕の見せ所だと私は思っております。

球形活性炭(®クレメジン)

活性炭は浄水器や脱臭剤など、生活の中で広く利用されています。医療分野では、進行した慢性腎臓病(CKD)で体内に蓄積する毒素を除去する目的で、薬として服用する治療法があります。我が国では、CKDの進行を防ぐことや、透析開始前の尿毒症による辛い症状を遅らせる目的で以前から使用されています。

しかし、臨床研究ではCKDの進行を防ぐ効果は証明されていません。そのため、CKDの早期からの使用を推奨する根拠は現時点ではありません。尿毒症を防ぐ効果についても明確な証拠はありませんが、活性炭によって体内の毒素を除去するという理論は妥当と考えられています。透析導入を少しでも遅らせたいと考える患者さんには、未認可のサプリメントに頼るよりも、球形活性炭(クレメジン)の使用することを提案しています。

球形活性炭の問題点

他の薬と同時に服用すると、治療薬まで吸着してしまう可能性があります。多くの薬は食事の前後に服用するため、球形活性炭は食事から最低1時間、可能であれば2時間以上離して服用してください。

球形活性炭には細粒と錠剤がありますが、いずれも一回の服用量が多く、多くの方にとって飲みにくい薬剤です。両方の剤型をお試しになった上で継続できそうな薬剤をお選びください。

主な副作用は便秘などの消化器症状です。服用開始後に胃腸の不調が出た場合は、必ず医師に相談してください。

貧血管理

慢性腎臓病(CKD)が進行すると、しばしば貧血が出現します。貧血は腎臓や心臓の機能を損なう危険因子となるため、腎機能を少しでも温存するためには、貧血に対して積極的な治療を行うことが望まれます。

CKD患者さんでは、ヘモグロビン(Hb)値が 10g/dL未満にならないことが重要です。私は Hb11g/dL前後を目標とし、鉄欠乏がないことを確認したうえで、以下の薬剤を使用しています。

赤血球造血刺激因子製剤(ESA):皮下注射もしくは静脈注射する注射製剤です。最初は2週間に1回投与し、貧血管理が安定したら4週間に1回の投与へ変更することが多いです。ESA開始後は鉄欠乏が出現することがあるため、定期的な採血で鉄欠乏の有無を確認することが必要です。

低酸素誘導因子-プロリン水産酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬):腎性貧血に対する新しい内服治療薬です。ESAの効果が乏しい腎性貧血症例ではHIF-PH阻害薬が有効なことがあります。ESA同様に鉄欠乏の出現時には充分な鉄製剤の併用が必須です。ESAよりも貧血の改善速度が速すぎることがあり、副作用のリスクを伴うため充分な使用経験がある医師による処方が望ましい薬剤です。

  • 短期間で急激に貧血が改善すると、血栓症などのリスクがあるため慎重な使用が必要です。
  • 投与開始直後は隔週で採血を行い、貧血の改善速度を確認します。
  • 採血回数が増えることについて、事前に患者さんの理解を得ることが重要です。
  • HIF-PH阻害薬は悪性腫瘍の患者さんへの安全性が確認されていないため、原則として悪性腫瘍の方への投与は控えます。

参考文献

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