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腎臓病の食事

慢性腎臓病と診断された患者さんから食事についてご質問をいただくことが多いです。大切なのは腎臓病食といっても一律同じ内容ではないことです。慢性腎臓病の原因・年齢・肥満度・身体活動度などにより食事の注意点は異なります。また食事は生活の上で大きな楽しみの一つですから食事療法が日々のストレスとならないような工夫も必要です。腎臓病の食事療法について具体的にご説明します。

塩分制限

腎臓病食を考えるときに第一にあげられるのが塩分制限です。腎臓の機能が少しずつ低下していくと体内に塩分が貯留しやすくなっていきます。塩分は血管内に水分を蓄える作用がありますが、体の塩分が過剰になると血管内の容量が増えすぎてしまい血圧が上昇します。血圧が上昇すると既に機能が落ちている腎臓に強い圧力が血液を注入することになり、さらに腎機能が低下するという悪循環におちいります。また塩分は水を保持する作用がありますので、腎臓病患者さんで足のムクミがある方は特に塩分制限が有効です。

低タンパク食とRAAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB・MRAといった血圧を下げる薬)は腎臓内部の浄化装置である糸球体の内部の圧を下げる作用があります。減塩食はこの糸球体内圧を下げる作用をさらに強めることで有効に蛋白尿を減らしたり、腎臓の機能を長持ちさせます。

塩分は1日6グラム以下にすることが理想です。しかし長年慣れている味付けを変えることは容易ではありません。調味料を少なめにする、ラーメンやウドンの汁はあまり飲まないといった小さなことから始めてみましょう。減塩をすることはすべての人にとって健康に近づくことにつながりますので、家族全員で少しずつ実践されることをお勧めします。

食事量が以前よりも減少している方は1日の塩分量も少ないはずです。発熱や下痢などの体調不良時も食欲が減って塩分は不足しがちです。塩分制限食は塩分が多すぎる食事の改善が目的ですので、食事量が十分でない場合には塩分は制限せずに食べやすいご飯をしっかりと食べてください。

果物と野菜

果物や野菜を多く食べることはCKD患者さんにとって有益です。果物や野菜にはビタミン、繊維質、アルカリ成分を豊富に含みます。植物の繊維質は便通を改善させることでCKDで問題となる高カリウムを防ぎ、腸内細菌に働きかけることを通じて腸の感染に対する防御力を強化したり炎症を防ぎます。植物の繊維質はインスリンの働きを強めて高血糖を防ぐなどの効果があることも報告されています。CKDでは血液が酸性に傾きやすいため植物が含むアルカリ成分を摂取することで体のバランスを保つことができます。果物と野菜を多く摂取することは血圧を下げる効果があることもCKDの進行を防ぐ大きな理由となります(高血圧の食事・運動療法 参照)。

カリウム:CKDが進行すると尿にカリウムを排出する機能が低下するため血液のカリウム値が高値になりえます。カリウムが異常高値になると生命にかかわる不整脈の原因となりますので、カリウム5.5(mEq/L)より高値となったら食事や薬を調節してカリウムを下げることが必要となります。腎臓・心臓の機能を温存するためにARB・ACE阻害薬・MRAといった薬剤は非常に有効なのですが、困った副作用としてカリウムが上昇しやすくなります。かつてはカリウムが上昇してきたら果物を禁止して、カリウムを上昇させる薬剤を減量しました。近年になってカリウムを下げる新しい薬剤が登場したため、この薬剤の併用により果物制限や薬の減量をしない選択肢が推奨されるようになりました。しかし残念ながらカリウム吸着薬は飲みにくさ、便秘・下痢の副作用、一部の薬は高額といった問題で全員の方が継続可能ではありません。私は患者さんの希望とカリウム値と相談しながら、可能な限り野菜と果物を摂取していただくよう試みるようにしています

CKDにはどの果物がお勧めですか?:繊維質が多くてカリウムが少ない果物がCKDには理想的です。この点からはリンゴ・ナシは繊維が多い点でCKD患者さんにはお勧めしやすいです。バナナ・パイナップルは繊維質1gあたりのカリウムが多いため食べ過ぎに注意してください(文献5)。 一回に食べる量でみるとイチゴ・スイカはカリウム量が少ない(5mmol未満/回)とはされていますが(文献6)、通常の何倍も食べてしまうと決して安全とは言えません。果物の美味しい季節に大量の果物を食べて高カリウム血症で入院される患者さんが時々おられます。果物はほどほどの量を美味しく食べるようにしてください。

果物ジュースは大量のカリウムを一気に摂取してしまうのでカリウムが高いCKD患者さんは避けるようにしましょう。桃やミカンの缶詰はカリウムがシロップに溶け出しているのでカリウムの含有量は生の果物よりは少ないのですが、カリウムが溶け込んでいるシロップは飲まないようにしてください。もちろん糖尿病患者さんにはシロップ漬けの果物はお勧めできません。

蛋白質

腎臓病食は蛋白質の制限が最大の特徴です。CKD患者さんの食事療法における蛋白制限について解説します。

蛋白制限食には長い歴史があり、かつては食事療法は慢性腎臓病の進行を遅らせる中心的な治療でした。食事の蛋白質を減らすことは腎臓病患者さんの食事療法の根幹であり、厳格な蛋白制限の有用性についてこれまで多くの報告がされました。現代でも蛋白制限食の有用性は認められていますが、患者さんによっては蛋白制限の緩和が必要であることも分かってきており食事療法も多様化しています。

蛋白制限の効果:蛋白質を制限すると腎臓のろ過装置(糸球体)に流入する血管(輸入細動脈)を狭くして糸球体の内圧を下げます。糸球体内圧を下げることは働き過ぎている腎臓を休ませて長持ちさせる重要な効果をもたらします。蛋白質を食べすぎると輸入細動脈が拡張して腎臓がフル稼働するようになります。自動車の運転でアクセルの踏みすぎるとエンジンが熱くなるように、腎臓の浄化機能が頑張りすぎると腎臓の寿命を縮めてしまいます。アクセルを軽く踏む低燃費走行で腎臓を長持ちさせるために低蛋白食は有効です。食事の蛋白質を減らすと蛋白尿が減りますが、糸球体内圧が低下して腎臓の負担が軽減することが理由ではないかと言われてます(文献4)。

蛋白制限の問題:皆さんが大好物に挙げる食べ物には蛋白質を多く含むものが多いのです。食事のうまみ成分はアミノ酸に含まれており蛋白制限をすることで食欲が低下する可能性があります。高齢の方は食欲が低下している比率が高く、蛋白制限を指導されることで食事量が減少して栄養状態が悪化する危険性があります。栄養状態が低下すると筋肉量が減少して身体活動度が低下します。筋肉量が少なくなる状態をサルコペニアと呼びますが、サルコペニアになってしまうと健康状態を大きく損なうことが分かってきました。これを受けて筋肉量が減少している患者さんには蛋白質を制限しすぎないという指針が発表されました(文献2)。蛋白制限は腎臓の機能を保持する良い作用と、筋肉を低下させて体力を落とす悪い作用の両方がある諸刃の剣であることに注意する必要があります。高齢の患者さんでは腎臓病がある方でも蛋白質を多く摂取した方が健康に良いという研究結果が最近報告されました(文献7)。高齢腎臓病の方の適切な蛋白摂取量についてはまだ結論は出ていませんが、高齢者にとっては筋肉量を維持することが非常に重要であるということは間違いないようです。

植物性蛋白質:これまでは厳格な蛋白制限をするためには必須アミノ酸を含む動物性蛋白質の比率を多くすべきという意見が主流でした。しかし近年になって大豆などの植物性蛋白質を50%以上にする食事が腎臓に良いことが報告されています。牛肉や豚肉といった赤い肉を多く食べることで心筋梗塞などの心血管病が増えるだけではなく腎臓病の進行が早くなるということが分かってきました。これらの理由から豆腐などの植物由来の蛋白質を多く摂取する食事は心臓にも腎臓にも有益だと言えます。

リン制限:腎機能の低下が進行すると血液のリン濃度が上昇していきます。リンが高値となると骨が弱くなったり、血管が硬くなるといった問題が発生します。さらに心臓の壁が過剰に厚くなること(心肥大)や腎障害が悪化しやすくなるといった合併症も来すようになります。リンは蛋白質に含まれる成分なので、食事の蛋白質を制限するとリンの上昇を抑えることができます。植物性蛋白質は動物性に比べてリンが腸の中で吸収されにくいという長所があります。食品添加物に含まれる無機リンは非常に吸収されやすく高リン血症の原因となりえます。ハムやソーセージなどの加工肉には無機リンが添加物として使用されており、高リン血症を来しやすいCKD患者さんには不向きです。またカマボコ・チクワ・はんぺんなどの練り物には塩分が多く使用されています。これらの食材を少なめにして腎臓に優しいタンパク質を選択するようにしてください。

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