健康診断で蛋白尿があると言われた方がおられたら早めに腎臓専門医を受診されることをお勧めします。もりもりクリニックでは経験ある腎臓専門医として個々の患者さんに適切な対応方法をアドバイスすることができます。
尿蛋白があると何が問題?
一般に健康診断ではリトマス試験紙のような試験紙の色の変化をみる簡便な検査方法で尿検査を行っています。尿蛋白が陽性の健診受診者には通常は医療機関を受診することが勧告されますが、実際には受診されていない方もおられます。ネフローゼ症候群という大量の蛋白尿の場合を除いて多くの蛋白尿の患者さんは無症状です。しかし蛋白尿が少しでもある患者さんは、心臓病や脳卒中といった心血管病を高い確率で引き起こすことが分かっています。また蛋白尿のある患者さんは腎臓の機能が低下する危険性が非常に高いことも明らかになっています。逆に蛋白尿は一見は健康そうに見える無症状の患者さんの将来の重大な病気の発症リスクを知らせる早期発見警報と言えます。
蛋白尿が出たらどうするの?
それでは健康診断で蛋白尿が陽性であった場合には腎臓内科医は何をするのでしょうか? 最初に判断することは緊急性です。蛋白尿が高度で血液のアルブミンという蛋白成分が低下しているときはネフローゼ症候群の可能性があります。血尿を伴い採血で腎機能の低下を認めた場合には急速進行性糸球体腎炎という重症疾患を疑います。このような場合には腎生検という検査を速やかに行うことができる総合病院へ急いでご紹介する必要があります。
緊急性がない場合には蛋白尿の原因を調べていきます。尿潜血が陽性の場合には尿沈渣といって尿を顕微鏡で観察する検査を行います。尿沈渣で腎臓に炎症を疑う所見がある場合には慢性糸球体性腎炎を疑います。糸球体腎炎を強く疑う場合には、まれに全身性エリテマトーデスなどの膠原病があるためは採血で膠原病関連の検査を確認します。
腎障害の原因となりうる病気である高血圧や糖尿病などの慢性疾患がある場合には発症してからの期間や治療内容をお聞きしていきます。高血圧や糖尿病はしっかり治療をしていれば腎臓病の原因となる危険性は大きく減らすことができます。特に蛋白尿を減らす作用のある薬剤を選択することで腎機能が悪化しないようにします。
慢性的な腎障害では超音波検査で腎臓の表面の凹凸や腎臓の表面の輝度上昇(画像が濃く見えること)があります。この所見が軽度である場合には人間ドックなどの超音波検査で「腎臓に異常なし」と判定されることがあるので腎臓専門医による評価が必要です。
起立性蛋白尿
学生さんや若い方の蛋白尿陽性のなかには「起立性蛋白尿」の患者さんがおられます(文献5)。歩き回るなどの軽い運動をしただけで蛋白尿が陽性となってしまうのが起立性蛋白尿の特徴です。起床直後に自宅で尿をとって専用の容器にいれて持参していただく「早朝尿」で尿蛋白がなく、来院時の尿検査で蛋白尿陽性であれば起立性蛋白尿と診断します。腎臓の機能が悪化する危険性は低いため、学生さんであれば夏休み・冬休み・春休みに来院してもらい早朝尿と来院時尿のチェック、年1回は採血で腎機能が悪化していないことを確認します。
尿蛋白±は異常ですか?
健康診断で用いられている試験紙を用いた検査では直前に飲んだ水の量で尿の濃さが検査結果に影響します。たくさん水を飲んだ後の薄まった尿では尿の比重が低下して尿蛋白は陰性になりやすく、飲水を我慢したり大量の汗をかいた後の濃い尿では尿蛋白が検出されてやすい傾向が報告されています。24時間の尿蛋白を測定した研究では濃い尿(尿比重1.030)の場合は試験紙で尿蛋白±であっても尿蛋白0.5g/day以上の患者さんは0%でしたが、薄い尿(尿比重1.010)では尿蛋白±の患者さんの25%が尿蛋白0.5g/day以上でした(文献1)。この結果が示すように尿の濃さに大きく影響される試験紙法の尿蛋白±は必ずしも正常範囲内と言い切れないのです。尿の濃さに影響されない正確な検査を行うためには尿の蛋白尿とクレアチニンを同時に測定して、クレアチニン濃度で尿の濃さを補正することで1日の尿蛋白量を概算する手法が行われます。
日本腎臓学会では尿蛋白±であっても尿潜血+もしくはeGFR45未満の場合には腎臓専門医へ紹介することをかかりつけ医に推奨しています(文献2)。また健康診断で尿蛋白±を2回連続で認めた場合も専門医を受診することが推奨されています(文献3)。健康診断で尿蛋白±であった方は腎臓専門医のもりもりクリニックにご相談ください。
参考文献
- (1) A dipstick protein and specific gravity algorithm accurately predicts pathological proteinuria. Am J Kidney Dis. 2005 May;45(5):833-41. PMID: 15861348
- (2) かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準[PDF] 作成 日本腎臓学会, 監修 日本医師会
- (3) 「腎健診受診者に対する保健指導、医療機関紹介基準に関する提言」. 腎健診受診者に対する保健指導,医療機関紹介基準に関する提言. 日本腎臓学会腎臓病対策委員会 腎健診対策小委員
- (4) CKD診療 現場の疑問に答えるQ&A – 中外医学社 「Question17 蛋白尿を見たら, どのような問診, 身体所見, 検査をしますか?」森永貴理著
- (5) UpToDate. Orthostatic (postural) proteinuria. last updated: Dec 01, 2022